室内バスケひだち家流

四日前、家で夕食を食べていた私は、ふと妙な物体がカーテンレールにくっついているのを発見する。

これは、いったいなんだろう?
不思議がっていると、弟2(三男坊・小六)が嬉々として説明を始めた。


弟2によればあの物体はバスケットのゴールなのだそうだ。
固いファイルの表紙をリング状に切り取り、裏から割り箸で補強したらしい。
彼は、製作物とボールを持って、弟1(次男坊・中三)の元に走った。
それから数刻の後、弟1と弟2は室内バスケひだち家流を開始する。
弟1が、考案したルールは以下とおり。

  1. プレー人数は2人。攻撃側と守備側に分かれる。
  2. 立ち上がってはいけない。立ちひざまで。
  3. 攻撃側がゴールを決めたら勝ち。守備側がボールを奪ったら、攻守交替。
  4. 天井にボールが当たったら仕切りなおし。
  5. ボールを持って移動して構わない。

ちょっと待つんだ弟たちよ! 最後のルールがある時点で、すでにバスケじゃないだろ?


どういう成り行きだったか覚えていないが、夕食の後、私VS弟1の勝負が始まる。
弟1は三つ年下だが、背は彼の方が高い。おまけにバトミントン部部長。(これが、弟だとは信じられない……)


先攻、弟1。「ボールを持って移動して構わない」というルールのため、両手でボールをガッチリホールドしながら私の左右を抜こうと試みる。
通常のバスケなら多分瞬殺。速攻抜かれていただろうが、相手も私も立ちひざ状態なので、スピードがでない。無理に抜こうとする時は、無理に体をねじ込んでガード。こう着状態が続く。……試してみるか。


私「あ……、弟2! お前なにやってんだよ!」(視線を外して声をあげる私)
弟1「え……?」(後ろを振り向く弟1)


ひっかかるんかい!! お前中三だろ!? こんな小学生みたいな手にやられるなよ!!
その瞬間にボール奪取に成功。手が当たったからファールだ! と弟は主張するが、審判がいない以上ファールもないのだ。
そう、まともに勝負したら負けは必須! ただ一つ勝機があるとしたら、それはルールを作ったのがこいつで、穴だらけということだ。


後攻、私
開始十秒後にボールを奪われる。うむむ……。


先攻、弟1
ここで、弟2がボールは片手で持つべしというルールを考案。膠着状態が解消される。
なんとかボールを奪い取る。


後攻、私
ボールを右手左手と移している間に、ふと思いつく。弟1はボールを追っている……。ということは……。
ボールを左手に持って思い切り手を伸ばしてみると、案の定ボールに集中し、私の左側に移動する弟1。
やっぱりだ。私が、右を通り抜けようとしているのに気づいちゃいねぇ……!
そのまま前に移動しながら、ボールを右手に移動。弟1とボールの間に自分の体があるので、取れない。そのまま通り抜けに成功。シュートも入る。


……勝っちゃった。




その後再戦を申し込まれるも、負けるに決まってるので断る。
熱い戦いだった……。


図①、使用されるボール。柔らかいので室内でも安全。

図②、その後弟が考案した秘密兵器。絨毯の上をすべるように移動できる! 弟1よ。高校受験は大丈夫か?