学年集会

ウチの学校は滅多に学年集会をやりません。
いや、他の学校と比較したわけではないのですが、それでも今年度、今日までたった2回しかやってないというのは、少ない方でしょう。
今日はその2回目の学年集会がありました。
なにしろ、珍しい出来事です。年二回って体育祭じゃあるまいし、って感じです。
その上今回は、何のための学年集会なのか生徒には伏せられていたので、様々な憶測が飛び交っていました。


「最近話題の自殺問題か」
「この前トイレットペーパーが窓から投擲された件についてでは」
「裏を書いて普通に勉強の発破かけだったりして」
「まさか履修漏れとか」


廊下に並んだ生徒達にも少なからず「なんなんだろー」的な雰囲気がありました。
期待20%の不安80%くらい。


今回の集会は他にも変わったところがありました。なぜか体育館ではなく玄関前のホールで行われたのです。
体育館が空いているのにもかかわらずです。
ウチの校舎は先月完成したばかりで、玄関前の広場は生徒の憩いの場として人気でした。
天井には卒業生から贈与された、大きなスピーカーがぶら下がっていて、なんでこんなところにスピーカー? と思ってたんですが、なるほど、ホールを集会に使うという目的があったわけなんですね。
謎は解けました。
ホールを集会に使うという目的が先に合ったのか、贈与されたスピーカーが先にあったのか、なんて余計なことを考えるのは無しにしましょう。
たぶん前者。前者だよ、きっと。


ただ、このホール。総勢360名を収容するにはちょっとばかし狭かったようで、列の後ろが下駄箱まで届いてしまいました。
飛んだ指示は「はみ出てもいいから座れ!!」
目的不明の集会に、狭すぎるスペース。生徒の間からざわめきが生まれます。
いったいこれから何が起ころうとしているのか……。
おもむろにマイクを握ったN先生に全員の注目が集まります。
先生のほうも、みんなが今回の集会の目的に注目していることを心得ている様子。
おそらく、最初の一言でそれが明かされるでしょう。
いつのまにかざわめきは消え、ホールに響くのはスピーカーから流れるホワイトのノイズだけとなりました。
学年主任のN先生が口を開きます。


N先生「今回の集会の目的は――」


今回の集会の目的は……!?


N先生「新校舎の可能性。えー、つまりこのホールのキャパシティがどれくらいあるか計ることです」


な、なんだって〜〜!!??


もちろんその後にトイレットペーパーを投げるなとか、勉強をがんばれとか、無灯火運転はするな、とか続いたんですが、一番最初に言った一言が先生方の本音をすべて体現しきっていました。


「新しい校舎で遊んでみたかった」


だから、僕はこの高校が大好きです。